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株主資本主義の誤算 短期の利益追求が会社を衰退させる
現代における企業は、他のどんなセクターよりも強大な、世界の主要プレーヤーになった。家業としての創業が専らだった19世紀後半はもちろん、専門経営者による経営体制への移行が進んだ第2次世界大戦前後でも考えられなかったことだ。金儲けだけが第1の価値となった現在、企業経営者は自らの私益のために株主優遇を前面に掲げ、ついに他の利害関係者を搾取するに至った。
しかも、ストックオプション(自社株購入権)の登場は株主の長期的利益と相反する効果までもたらした。かくて経営コンサルタントでもある著者は警鐘を鳴らす。「この新しい企業倫理は、確かに株価をつり上げ、多くの投資家をより金持ちにした。だが一方で、短期的な経営手法と相まって、多くの人々の生活を破綻させた。(中略)さらに多くの人は、自動化とグローバル化が高度に進んだ環境が、利益のためには手段を選ばないことを知った。これほど人間生活と秩序を破壊するものが、正しいわけがあるだろうか?」。

いくつもの具体的な事例が俎上に載せられる。中でもお馴染み米ゼネラル・エレクトリック(GE)の前最高経営責任者(CEO)ジャック・ウェルチ氏と、小売業の王者米ウォルマート・ストアーズのケーススタディーが興味深い。ウェルチ氏はCEO在任中にGEの株価を極限に高めたが、金融事業への傾斜を強める一方、研究開発(R&D)支出を削り過ぎて会社の存在意義を曖昧にし、長期的価値を失わせてしまった。またウォルマートは、進出した地域をことごとく荒廃させてきた。やることなすこと裁判ざたになって、同社に対する訴訟は2万5000件を数えているという。

もちろん、だからといって従来のいわゆる日本的経営が優れているということにはならない。要は程度問題だ。著者の住む米国では行き過ぎが誰の目にもあらわになって、既に株主優遇に代わる価値を求める模索が始まった。10年遅れの日本ではその悲惨な未来を想像する力が乏しいため、依然として構造改革にバラ色を夢見る人々が多数派を占め続けている。

行き着くところまで行ってしまったがゆえの反省ではあるにせよ、著者の指摘は鋭い。株主はじめ関係者すべての長期的価値の最大化こそ企業の目的にもかかわらず、短期的利益しか考えられず企業を破滅に導く。一方で一生かかっても使い切れないだけの報酬を要求する経営者とは何なのか。

「そもそも最初からそんな人物を雇わない方が、会社にとっても世の中にとっても良いことなのである」。日本はまだしも、彼らの悲劇に学ぶことのできる立場にあるはずなのだが。



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